遺言について

遺言書の作成や手続きについてご案内

遺言書の種類や作成の流れ、注意すべき点について分かりやすく解説しています。残されたご家族様が安心して歩んでいけるようにするためには、遺言書の準備が大きな役割を果たします。遺産の分け方だけでなく、特定の方への感謝や配慮を形にできる手段として、遺言は法的にも心情的にも大きな意味を持ちます。また、正しく作成すれば、将来のトラブルを防ぐ有効な手続きとなり得ます。

遺言書のメリット

遺言書があれば
遺産相続争いを未然に防げる

遺言書がなければ故人が残された遺産をどのようにしたいのか遺族には分かりません。仮に口頭で家族に伝えていたとしても法的に有効な遺言とはなりません。遺言書がない場合、その分割方法で揉めるケースが非常に高くなり、家庭裁判所で調停・審判で長期間相続人間で争うことにもなりかねません。中には10年にも渡る期間話し合いがまとまらないケースもあります。故人が遺産で家族が揉めることを望むでしょうか?まずないでしょう。揉めてほしくないという想いも遺言書があれば遺族に伝えることができ、争いを未然に防ぐことができます。

遺言書があれば
特定の人に確実に遺産を残せる

遺言書がなければ遺族は原則として法律に定められた割合で遺産を相続することになります。これを法定相続分といいます。これによらず全員が円満に遺産分割協議をおこない書面を作成すれば、法定相続分とは異なる割合で遺産を分けることもできますが、なかなか実現できないケースを多いのが現状です。遺言書があれば「不動産を・・に」「預貯金を△△に」いった特定の財産を特定の人に残すことができますので、分け方等で争うことを防ぐことができます。

遺言書があれば、
相続手続きの負担を軽減できる

一般的に遺産相続手続きはかなり手間と労力がかかるものですが、遺言書があれば遺産の内容が分かるので手続きが比較的スムーズになります。また遺言書があると凍結された故人の預貯金等の解除手続きもかなり楽になります。特に遺族が高齢や病気であまり自由に動けなかったり、勤め人で時間がないもしくは遠方にいる等の事情がある場合は大きなメリットがあります。

遺言書の注意点

認知症になると遺言書は書けない

遺言書には書く方の想いを紙に記すものなので、認知症になってしまいますと本当にその方が望んだ内容なのか分からず信頼性に欠けてしまいます。そのため、遺言書は認知症になる前にできる限り早く作成しておくことが重要です。

法定相続人には遺留分がある

遺言を書く方にとっては、慈善団体やお世話になった親族以外の人に遺産を渡したい(これを遺贈といいます)と考えられる方もおられます。しかし法律上相続人となる資格がある方には、たとえ遺言書に法定相続人への遺産分配をゼロとしていても最低限相続できる権利があります。これを「遺留分」といいます。※兄弟姉妹には遺留分はありません。遺留分を侵害している遺言書も有効ですが、法定相続人は侵害された遺留分を取り戻す「遺留分減殺請求」という権利を行使することができます。この行使をするということは相続人の間で紛争状態になっていることが多いです。

紛争防止のため「遺留分」を考慮した遺言書をお勧めいたします。

相続財産に対する
各法定相続人の遺留分割合

子と配偶者が相続人:子が4分の1、配偶者が4分の1。
父母と配偶者が相続人:配偶者が3分の1、父母が6分の1。
兄弟姉妹と配偶者が相続人:配偶者が2分の1、兄弟姉妹は遺留分なし。
※兄弟姉妹には遺留分の権利はありません。そのため遺言によって遺産を与えないようにすることも可能です。
配偶者のみが相続人:配偶者が2分の1。
子のみが相続人:子が2分の1。
直系尊属のみが相続人:直系尊属が3分の1。
兄弟姉妹のみが相続人:兄弟姉妹には遺留分なし。

実は知らない争族の統計

皆さまは、相続対策や、親族が揉めることを「それは大金持ちの話でうちには関係ない」と思っていらっしゃいませんか?それは大間違いです。家庭裁判所が発表しているデータでは相続で紛争状態になっている約70%が、財産総額5,000万円以下。このうち、相続財産が1,000万円以下の割合が約30%。このデータを皆さまにお伝えすると、驚かれます。このように家族が揉める可能性は対岸の火事ではなく、うちにも起こり得ることであると思っていただいたほうが良いでしょう。

遺言書を書く必要性チェック

こちらのチェックシートでご自身が遺言書の作成が必要なのかどうかを確認してみてください。
遺言書を書く必要性チェック

そもそも遺言書とは?

遺言書という言葉は、ほとんどの方がご存知かと思います。しかし具体的にどんな種類があり、どのような利点・問題点があるのかまでご存知の方は少ないのが現状です。そこで遺言書の種類と利点・問題点を表にまとめてみました。

  • 作成方法 証人の有無 利点 問題点
    自筆証書遺言 本人の自筆 不要 〇手軽に作成できる。
    〇費用がかからない。
    〇内容が誰にも知られない。
    ×自筆で書くので非常に手間(代筆・パソコン不可)
    ×様式不備で無効になる可能性がある。
    ×偽造・紛失・盗難の恐れがある。
    ×死後発見されないことがある。
    ×開封に家庭裁判所の検認手続きが必要(1~2ヶ月程度かかる)
    秘密証書遺言 自分で作成した遺言書を封印して公証役場で認証を受ける。 証人2名 〇遺言書の本文は代筆やパソコンでも可能。
    〇内容が誰にも知られない。
    ×様式不備で無効になる可能性がある。
    ×公証人や証人に依頼する手間と費用がかかる。
    ×紛失の危険がある。
    ×実際にはほとんど利用されていない。
    公正証書遺言 公証人が作成(遺言者の口述やメモに基づく) 証人2名 〇公証人が作成するので不備等で無効になる心配がない。
    〇原本を公証役場で保管するので偽造・紛失の心配がない。
    〇検認手続きが不要〇寝たきりや目が見えなくても作成可能。
    ×公証人や証人に依頼する手間と費用がかかる。
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自筆証書遺言

紙とペンさえあれば、いつでもどこでも手軽に作成ができます。(全文自筆)しかしその書き方には厳格に法律で決められており、少しでも様式に不備があれば無効とされてしまいます。また開封の際には家庭裁判所の検認手続きを経なければいけませんが、この手続きに必要な期間が約1~2か月程度かかります。その間故人(被相続人)の口座が凍結されてしまいますので、相続人は葬儀費用やその他の支出について別途資金を確保しておく必要もあります。また手軽に作れてしまうがゆえに、保管場所も様々で紛失や発見されない可能性もあります。特定の相続人が発見して検認手続きを経ずに開封し、不利な内容が書いてあった場合偽造や破棄してしまう恐れもあります。

秘密証書遺言

自筆証書遺言と公正証書遺言の中間に位置するものです。自分自身で作成した遺言書を公証役場に持参して、公証人と証人2名の立ち会いのもとで遺言書を封印します。手間がかかる割にメリットが少ないため、あまり利用されていないのが現状です。

公正証書遺言

自筆証書遺言のように全文自筆である必要がなく、代筆・パソコンでの作成ができます。遺言を残す方の意思に基づいて公証人が遺言書を作成して、相続発生まで原本を公証役場に保管します。遺言者には原本と同一の効力を有する正本が渡されます。なお、正本を紛失した場合でも再発行も可能です。多少手間と費用がかかりますが様式不備で無効となる可能性が低く、紛失や変造などの恐れがありません。公正証書遺言には自筆証書遺言に必要な検認手続きは不要とされているため、相続手続きを迅速に進めることができます。また病気等で公証役場にいけない方も、公証人が老人ホームや病院、自宅まで訪問して作成することも可能です。
当事務所では「紛争予防」を最も重要視しているため、公正証書遺言のみ取り扱いしております。(※紛争予防の緊急処置として自筆証書遺言を一時的にご提案することもあります)

付言

付言とは遺言書の中に、被相続人(故人)が「どのような想い」でこのような遺言を遺したのかを書く、いわば相続人へ向けたメッセージです。法的効力はありませんが、この付言を入れることで紛争の予防に大いに効力を発揮します。

法律家の多くはこの付言についてあまり触れていませんが、実は非常に大切な項目です。当事務所ではこの付言の作成支援に力を入れております。
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(例)土地・建物を・・に遺す理由
預貯金を△△に遺す理由(または遺さない理由)
・・へ遺贈する理由
●●に葬儀をお願いする理由
埋葬方法に関するお願い
など

ご注意:相続人への恨み・怒りなど、マイナスの内容はトラブルの元となるため絶対に入れてはいけません。
遺言書を作成するということは、全てが円満にことが進むようにすることです。当事務所は円満相続が実現できるよう支援いたします。

遺言執行者

法律家に遺言執行を委任することで、手続きがスムーズになり、相続人同士の争いを未然に防ぐことができます。

遺言執行者とは

遺言執行者とは被相続人の死後に、相続財産の管理やその他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利と義務をもつ人です。簡単に言うと遺言内容を実現する人のことをいいます。遺言書の中にこの執行者を指定することができます(未成年者・破産者は指定できません)。遺言執行者は必ず指定しておかないといけないものではありませんが、せっかく作った遺言書なのに内容に不満をもって相続手続きに協力しなかったり妨害をする方がいた場合、相続手続は停滞します。

相続人もこの遺言執行者になることができますが、遺言執行者でない相続人から「多めに財産を受け取っていないか」などのあらぬ疑いをかけられる可能性も有り得ます。第三者である行政書士等の法律専門家が中立公正な立場で遺言執行者になることで、上記のような問題を回避することができます。また、遺言執行者が指定されていれば、相続人の中の誰かが勝手に財産を使ったり売却した場合、遺言執行者はその行為を取り消すことができます。

第三者を遺言執行者を
指定するメリット

なんといっても一番のメリットは銀行手続き・遺産分割手続きがスムーズになることです。故人の口座は死亡と共に凍結されてしまいますが、これを解除する手続きは相続人全員の署名捺印を求められたり、印鑑証明書の提出を求められたりすることがあります。最悪の場合、遺言を書いていても遺産分割協議書を作成しないといけない場合もあります。たとえ遺言執行者がいたとしても、その指定された方が相続人の1人であった場合は同様のケースになることが多いです。つまり相続財産が相続人の手元にくるのが大幅に遅れるリスクがあるということです。

これに対して弁護士や行政書士が遺言執行者に指定されていた場合、原則遺言執行者の署名捺印のみで手続きが可能となり、上記のような煩雑な手続きから解放され、より早く相続財産を受け取ることができます。

遺言執行者の
指定がないとできないこと

遺言の内容には遺言執行者の指定がないと実現できないことがあります。
・子供の認知
・相続人の廃除・廃除の取消し
これは被相続人の死後、ご本人に代わり手続きを要するからです。

子供の認知とは、婚姻外で生まれた子供(非嫡出子といいます)を父親が自分の子供であると認めることです。(母親は分娩の事実があるので原則認知の必要はありません)生前何らかの理由で認知できなかった場合、遺言で認知することができます。この認知がなされないと父親と法的な親子関係が生じず、財産を相続することができません。

相続人の廃除とは、将来相続人になるべき人が日頃から素行が悪く、被相続人に暴行や虐待などをおこなう等の問題行動を繰り返している場合、遺言で相続人から廃除することです。またその反対で、生前家庭裁判所を通して相続人から廃除していたが気が変わった場合は、遺言書の中で取り消すことができます。